がんの診断と手術 | 仁楡会札幌病院

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がんの診断と手術

泌尿器科のがんの種類

がんには様々な種類がありますが、泌尿器科で対象となるがんは主に以下となります。
当院では、特に腎盂がん、前立腺がんの治療実績が多くなっています。

腎がん(腎細胞がん)

腎がんとは

腎臓は腰の少し上に左右ひとつずつ存在するそら豆型の臓器です。
腎臓は血液をろ過して浄化し、血液の不要な成分を尿として排泄します。
尿は腎臓の中心にある腎盂に集まり尿管を通って膀胱に送られます。
腎臓の細胞から発生するがんを腎細胞癌と呼びます。

腎がんの症状

最近は超音波(エコー)検査が広く行われるようになったため、特別な症状がないうちに、検診などで発見される腎がんが増えています。

検査と診断

腎細胞がんの検査・診断は、以下の方法で行います。

① 腹部超音波(エコー)検査

超音波検査は超音波を体の表面から内部に向かって発射し、臓器から返ってくる反射の様子を画像にします。
患者様に負担が少ない検査方法で、初めての方におすすめの検査方法です。
腎臓に腫瘤が見つかった場合、まず腎がんを疑います。

② 腹部CT検査

CTはX線を使い、体の内部を断面画像として確認できるようにする方法です。
腎細胞がんを疑うときは造影剤を使ったCT検査が行われます。
造影剤を静脈から注入した後、腎臓部分の撮影を繰り返して行い、造影剤が腫瘤に行きわたる様子をとらえます。
腫瘤に流れる造影剤の様子から腎細胞がんの診断を行います。

③ MRI検査

MRI検査では磁気を用いて腫瘤の性質、大きさ、周囲臓器への影響を調べます。
超音波検査やCT検査で十分に診断できないときにMRI検査を行います。

④ 胸部CT検査、骨シンチグラフィ

腎細胞がんと診断された場合には、がんの広がりや、リンパ節、肺、骨、肝臓などへの転移がないかどうかを調べるために胸部CT、
骨シンチグラフィなどの画像検査を行います。
シンチグラフィ検査では微量な放射線を出すアイソトープ(放射性同位元素)を目的に合わせて調整した薬にして使います。
これらの薬は静脈に注射された後、検査の目標となる臓器に集まります。
シンチグラフィでは臓器に集まったアイソトープから放射される放射線を画像にします。
骨シンチグラフィに使われるアイソトープには骨に集まる習性が与えられており、骨への転移を判断できます。

治療について

① 手術治療

腹腔鏡や開腹による病巣の切除を行います。

② 薬剤治療(分子標的薬や免疫療法)

腎がんに対する積極的な治療としては手術治療による切除と、分子標的薬や免疫療法という薬剤治療があります。
腎がんの治療はがんの進行の程度や体の状態に合わせて手術治療と薬剤治療を最適に組み合わせる必要があります。
最近はエコー検査などで早期に見つかる腎がん(転移がなく隣の臓器への進行のないもの)が多いため、多くの場合は手術による切除が中心となります。
しかし、進行性腎がん(転移があったり隣の臓器に進行したりしているもの)については手術治療で切除した後に薬剤治療を行う必要があったり、切除が不可能と考えられる場合には初めから薬剤治療を行ったりします。
薬剤治療によって切除可能となった進行性腎がんについては手術治療を行うこともあります。
進行性腎がんについては主治医と治療方針についてよく相談する必要があります。

③ 放射線療法

放射線による治療は高エネルギーのX線でがんを小さくする効果がありますが、腎がんにはあまり高い効果は期待できません。
腎がんの骨への転移によって生じる痛みや脊髄圧迫症状などの予防、症状緩和に使用されます。

腎盂がん・尿管がん(尿路上皮がん)

腎盂がん・尿管がんとは

腎盂と尿管は上部尿路と呼ばれ、ここにできるがんのことを腎盂・尿管がんといい、一つにまとめられることが多い病気です。
腎盂から尿管、膀胱、尿道の一部へとつながる尿路の内側は、尿路上皮(移行上皮)と呼ばれる粘膜でできています。
この細胞から発生するがんを尿路上皮がんといい、腎盂・尿管がんのほとんどを占めます。
腎盂・尿管がんは、尿路内のいろいろな場所に多発しやすいという特徴があり、腎盂と尿管の両方にできることもあります。
左右どちらかの腎盂か尿管にがんができ、その治療後に反対側の腎盂か尿管にがんが発生することもごく稀にあります。

腎盂がん・尿管がんの症状

最近は超音波(エコー)検査が広く行われるようになったため、特別な症状がないうちに、検診などで発見される腎盂・尿管がんが増えています。
また、水腎症があって精密検査をした結果、腎盂・尿管がんが発見されることもあります。

検査と診断

腎盂がん・尿管がんの検査・診断は、以下の方法で行います。

① 腹部超音波(エコー)検査

患者様に負担が少ない検査方法で、初めての方におすすめの検査方法です。
腎盂・尿管内のがんの有無、水腎症の状況、リンパ節への移転状況などがわかります。

② 内視鏡検査

内視鏡検査は、膀胱用の内視鏡を尿道から膀胱へ挿入して行います。
膀胱がんは、腎盂・尿管がんよりも発生頻度が高いため、まずは膀胱がんの可能性を検査します。
膀胱内にがんが見つからなければ、尿管口から出血がないかを確認します。

③ 尿細胞診検査

尿にがん細胞が含まれているかを確認する検査です。
尿細胞診検査は5段階で評価され、1、2段階は悪性なし、3は疑陽性(悪性の疑いあり)、4、5は悪性の可能性が強くなります。
しかし、がんがあっても尿細胞診検査では検知できないこともあるので、他の検査と併用して検査を行います。

④ 排泄性腎盂造影(IVPまたはDIP)

腎機能に問題がなければ、排泄性腎盂造影(IVPまたはDIP)を行います。
静脈性尿路造影とも呼ばれ、造影剤を静脈にいれてX線撮影を数回行います。
尿の流れの異常を把握することで、がんの有無を判断できます。
この検査では、腎盂・尿管がんの90%以上に異常がみられるため、精度が高く重要な検査です。

⑤ 逆行性腎盂造影(RP)

①~④の検査で異常が見つかり、腎盂・尿管がんが疑いがある場合、逆行性腎盂造影(RP)を行うことがあります。
内視鏡を尿道から挿入し、膀胱内の尿管口からカテーテル(細い管)を挿入します。
この時、尿管から直接尿を採取し、尿細胞診検査を行うことがあります。
さらに、このカテーテルから造影剤を注入してX線撮影を数回行い、腎盂や尿管の形状を観察します。
排泄性腎盂造影(IVPまたはDIP)ではよく見えなかった部位や、その他の異常を明らかにすることができます。
カテーテルがどうしても挿入できない場合や、尿管の下端だけしか造影されない場合などは、超音波を使用しながら、細い針で腎盂を穿刺して造影することがあります。

⑥ 尿管鏡検査

腎盂・尿管がんが疑われても、これまでの検査で診断するには十分な所見が得られなかった場合、尿管鏡検査が行われることがあります。
この検査は麻酔をして行います。まず尿道から膀胱内に内視鏡を入れ、尿管口から尿管、腎盂まで内視鏡を進めます。
内視鏡で尿管や腎盂の様子を観察できることと、異常が疑われる部分の組織を採取すること(生検)も可能です。
生検した組織を顕微鏡で調べることで、浸潤性の有無、がん細胞の様子(異型度)が術前に判定できる場合があります。

⑦ CT検査、胸部X線検査、骨シンチグラフィ

腎盂・尿管がんと診断された場合には、がんの広がりや、リンパ節、肺、骨、肝臓などへの転移がないかどうかを調べるためにCT、胸部X線、骨シンチグラフィ、MRIなどの画像検査を行います。CTはX線を使い、体の内部を画像として確認できるようにする方法です。
通常はアイソトープ(放射性同位元素)のヨードを造影剤として使います。
CTでは、がんの広がり具合や、リンパ節、肺、胃、肝臓などへの転移がないかを調べることができます。
最近では、CT urographyと呼ばれる手法を用いることで、IVPまたはDIPより病巣を正確に把握することができるとされています。
造影剤に対するアレルギーがある場合や、腎機能に問題がある場合には、MRIによる検査を行うこともあります。
骨シンチグラフィはアイソトープ(放射性同位元素)を使った骨のX線検査です。

治療について

① 手術(外科療法)

腎盂・尿管がんの治療は、手術が中心になります。
ただし、表在がん(粘膜にとどまっているがん)であるか、浸潤がんであるかどうかによって、治療方針が異なります。
転移がなければ基本的に手術を行いますが、尿路上皮がんは多発・再発するのが特徴なので、がんのある部分のみの切除は行いません。

腎尿管全摘除術および膀胱部分切除術

がんのある片側の腎臓、尿管、さらに膀胱壁の一部を含めた全ての上部尿路の摘出および膀胱部分切除を行います。
腎臓と尿管全体を摘出するため、その腎臓の側の腎盂や尿管からの再発の心配はありません。
ただし、膀胱内にがんの再発がみられる場合があります。
腎臓は左右に1つずつあるため、片方の腎臓を摘出しても、もう一方の腎臓が正常に機能すれば生活上の制限はあまりなく、人工透析が必要になることは稀です。

尿管部分切除

がんが尿管のみにある場合、あるいは1つしかない腎臓の腎盂や尿管にがんが発生した場合などは、腎臓を摘出せず、尿管の部分切除を行うことがあります。
残った部分にがんが再発する可能性がある場合は、状況を見て治療法を検討します。

内視鏡的切除術

各種画像検査や尿管鏡検査で尿管がんと診断された場合、悪性度の診断と治療を兼ねて、内視鏡的切除術を行うことがあります。
内視鏡と治療器具を使用してがんを切除します。
一般的に、悪性度の低い小さながんに用いる方法です。

② 化学療法(抗がん剤治療)

浸潤性の尿管がんは外側に広がりやすい特徴があります。
また浸潤性の腎盂がんは、腎臓の中に広がったり転移したりすることが多くあります。
そのため、術前の画像診断によりがんの浸潤が認められた場合や、手術後の組織診検査の結果によっては、手術前後に抗がん剤治療を行うことがあります。
また、既にリンパ節や別の臓器に転移している場合は、数種類の抗がん剤を組み合わせて使う多剤併用化学療法を試みます。
このような場合、抗がん剤治療の効果を見極めた上で、手術や放射線治療を追加することもあります。
抗がん剤の効果と副作用には個人差があるため、効果と副作用の両方を見ながら抗がん剤治療を行います。

③ 放射線療法

放射線による治療は、高エネルギーのX線でがんを小さくする効果があります。
しかし、腎盂・尿管がんなどの尿路上皮(移行上皮)がんにはあまり高い効果は期待できません。
がんの転移があり、完治が望めない場合や、年齢・合併症などにより手術が難しい場合、痛みなどの不快な症状を緩和するために放射線療法を選択する場合があります。
放射線療法には、だるさや吐き気など、いくつかの急性的な副作用がありますが、5年、10年と時間が経過してから副作用の出現が起きることもあります。

④ 腔内注入療法

腎盂・尿管内注入療法(BCG)

腎盂・尿管の上皮内がんの場合には、腎臓を温存するために、結核に対するワクチンとして使われるBCGを、カテーテルで腎盂・尿管に注入する方法が選択されることがあります。
また、腎機能が悪いために、腎臓の摘出が行えない場合、表在がんの治療や再発予防のためにBCGを使用する場合もありますが、治療効果についての評価は定まっていません。
副作用としては、発熱のほかに、結核菌が血液によって運ばれ、多臓器に結核病変が形成される重症結核症があります。

※出典 国立がん研究センター

前立腺がん

前立腺がんとは

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより起こります。
多くの場合ゆっくり進行することが多いため、早期に発見すれば治癒する可能性が高くなります。
リンパ節や骨に転移することが多く、肺、肝臓などに転移することもあります。
前立腺がんの中には、進行がゆっくりのため寿命に影響しないと考えられるがんもあります。
また、がん以外で死亡した人を詳しく調べた結果、前立腺がんだったという事例もあります。

前立腺がんの症状

早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありません。しかし、尿が出にくい、排尿の回数が多いなどの症状が出ることがあります。
進行すると骨に転移し、上記の症状に加えて、血尿や腰痛などの痛みが生じる場合があります。
関連する疾患には、前立腺肥大症があります。

検査と診断

前立腺がんの検査・診断は、主に以下の方法で行います。

① PSA(前立腺特異抗原)検査

PSA検査は、前立腺がんを早期発見するために最も有効な検査です。
がんや炎症により前立腺組織が壊れると、PSAが血液中に漏れ出して増加します。そのため、血液検査でPSA値を調べることにより、前立腺がんの可能性を調べることができます。
PSAの基準値は一般的には0~4ng/mLとされています。
PSA値が4~10ng/mLの場合、前立腺がんの疑いがあり、25~40%の割合でがんを発見することができます。
また、PSA値が10ng/mL以上の場合でも、前立腺がんが発見されないことがあり、4ng/mL以下で前立腺がんが発見されることもあります。
100ng/mLを超える場合には前立腺がんの疑いが強く、転移も疑われます。
PSAには、遊離型PSA(free PSA)と結合型PSA(complexed PSA)があり、総PSA(total PSA)に対する遊離型PSAの割合(F/T比)は前立腺のほかの病気(前立腺肥大症など)との鑑別に用いられています。
F/T比が低い場合は前立腺がんの可能性が高くなります。

② 直腸診・経直腸エコー(経直腸的前立腺超音波検査)

直腸診は、医師が肛門から指を挿入して前立腺の状態を確認する検査です。
前立腺の表面に凹凸があったり、左右非対称の場合には前立腺がんの疑いがあります。
経直腸エコーは、超音波を発する器具を肛門から挿入して、前立腺の大きさや形を調べる検査です。

③ 前立腺生検

自覚症状、PSA値、直腸診、経直腸エコーなどから前立腺がんの疑いがある場合、最終的な診断のために前立腺生検を行います。
前立腺生検では、超音波による画像で前立腺の状態をみながら、細い針で前立腺を刺して組織を採取します。
初回の生検では12カ所の組織採取を行います。
前立腺生検でがんが発見されなかった場合にも、PSA検査を継続し、PSA値が上昇する場合には再生検が必要になることがあります。
前立腺生検の合併症には、出血、感染、排尿困難などがあります。

④ 画像診断

画像診断ではCT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ検査などを必要に応じて行います。
CT検査では、リンパ節転移の有無や肺転移の有無を確認するために行われます。
MRI検査では、がんが前立腺内のどこにあるのか、前立腺の外へ浸潤がないか、リンパ節へ転移がないかなどを調べます。
CT検査、MRI検査ともに、造影剤を使用するため、アレルギー反応が起こることがあります。
骨シンチグラフィ検査では、骨に転移があるかどうかを検査します。

治療について

前立腺がんの治療には、主に以下の方法があります。

手術療法

・前立腺全摘除術

放射線療法

・外部照射療法・組織内照射療法

PSA監視療法

・定期的なPSA値の検査で経過観察

化学療法剤(抗がん剤による治療)

・植物アルカロイド、アルキル化剤等

緩和的療法

・疼痛対策、脊髄麻痺対策

ホルモン療法(内分泌療法)

・去勢術(精巣摘除術)・薬物療法・LH-RH(GnRH)アゴニスト・LH-RH(GnRH)アンタゴニスト・抗男性ホルモン剤・女性ホルモン剤

※出典 国立がん研究センター

手術の方法

① 腹腔鏡手術(ラパロ手術)

腎がん・腎盂がん・尿管がんが適応です。

お腹の1~4箇所を小さく切開し、腹腔内の様子をモニターで観察しながら、専用の手術器具を使って、切開、切除、吸引、焼灼、止血、縫合などを行う内視鏡手術で、実施頻度が最も高い手術です。

メリット

デメリット

② 経尿道的内視鏡手術(TUR)

膀胱がんに対する内視鏡的切除術は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)と呼ばれます。実際には、腰椎麻酔、もしくは全身麻酔を施し、尿道から手術用内視鏡を挿入し、病巣部を電気メスで切除します。
同時に、病巣部以外の膀胱粘膜を数カ所から採取し、がん細胞の有無を顕微鏡で検査します。
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)は、開腹手術に比べ簡便で身体的負担(侵襲)が少ないという利点があります。
しかし、内視鏡手術の特性上、膀胱壁の外側まで切除することはできず、リンパ節も摘出できません。
そのため、CT・MRI検査や内視鏡検査などからリンパ節転移が確認されず、病巣の深さも筋層表面までと推測される場合に適用されます。

メリット

デメリット

③ 従来式の開腹手術

浸潤性膀胱癌および前立腺癌については、従来式の開腹手術を行っております。(根治的膀胱全摘術および尿路変向術、根治的前立腺全摘術など)
尿路変向術は、当院では回腸導管、尿管皮膚瘻といった尿非禁制型が主となり、腸管利用新膀胱造設術などの尿禁制型には対応しておりません。

手術以外の治療法

進行性尿路上皮癌(膀胱癌、腎盂癌、尿管癌)と、精巣癌については抗癌剤を使った治療(化学療法)を行っています。
(重症である場合は北海道がんセンターに抗癌剤治療を依頼することがあります)
前立腺癌に対する手術療法以外では、内分泌療法(ホルモン療法)、抗癌剤治療(化学療法)を行っております。
(放射線治療は行っていないので放射線治療科のある病院に紹介します。)